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杉林恭雄の珠玉のショートストーリーシリーズ

「YUMI」

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「UMI」

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「MICHIRU」

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全編完結の連載小説はこちら!

「走る女」 by 田村充義
バブル絶頂期に知り合い、やがて別れてしまった恋女房。
オレは神宮外苑の周回路を走る彼女に、時を隔て再び出逢った。
Mid40世代の恋愛小説。

「ゾロ目の法則」 by 田村充義
小さな出版社でバイトをしていたわたしは、占い本の企画をしただけだったのに…。
いっぺんに訪れた歌手デビューと恋。さて気になるその行方は?

「宇宙の3犬人 〜Three Dog Knights」 by 田村充義
あなたの愛犬が、宇宙からの使者だったりして…。

「女子アナオールスター 」 by 田村充義
原宿に愛をはぐくむ縁結びの美容室があるとか…?!

「ゲンジツトウヒローのダックウォーク」 by 田村充義
エアギターに賭ける青春物語…。

「30年目のガールズトーク」 by 田村充義
45歳、独身。
30年後のクラスメイトたちの恋の行方は?
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田村充義氏の新作、
聞き録り屋と買い取り屋」完結。

平凡この上ない僕が始めたアルバイトとは…?

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2009年05月12日

ゾロ目の法則<1>

Story by 田村充義



<1>

「ヤイヤイヤイヤイ。イカサマだぃ。サイコロの中に重石が入っているに違いない。ゾロ目ばっかり出しやがって。検(あらた)めさせて貰うぜ」胴元に向かってドスを突き出し因縁をつける私。
晒し(サラシ)からはみ出しそうなほど大きい胸を相手に見せびらかし、突っかかる。
「なんだと。いちゃもん付ける気かよ。ただじゃおかねぇぞ。気が済むまでみるがいいさ。客人」意気込む胴元。
「望む所だぃ。貸してみろぃ。こうして割ってみるからな。吠え面かくんじゃネェぞ。エイ!あれ?おかしいな。普通のサイコロだ」
「どうしたんだよ。さっきの威勢は。イカサマなんだろう?客人。イカサマじゃねぇんだったら、どうなるか分かってるんだろうな。簀(す)巻きにして河に投げ込まれてぇか。それとも指でも詰めてくれようかい、えぇ?」
ますます焦る私。「おかしいなぁ。こんなはずじゃ」
「どうしたんだぃ客人」
「おかしいなぁ」
「どうしたんだぃ?客人」
「おかしいなぁ、おかしいなぁ」
  *
「お客様!お客様!大丈夫ですか?起きて下さい、お客様!」
「おかしいなぁ…」
「お客様!!」
「あっ。はい。ここはどこ?」
「店内で大きな声を上げちゃ困ります」
「スミマセン」
最近毎日見る夢を、カフェでうたた寝しながら見て、おまけに寝言までいっていたようだ。
恥ずかしいから取る物も取りあえず、早速店から飛び出た。
店内の人達に笑われている気がして、あわてて車道に飛び出してクラクションまで鳴らされる。
私は島田ユカ、通称ユカリン22才、フリーター。
いやフリーターと言っても、今は幻灯社という小さな出版社に勤めている。
バイトだけどね。

最近変な夢ばかり見る。
グンの奴のせいだ。
本当は“郡”と言う苗字の部長なんだけど、私は密かにグンと呼んでいる。
軍隊のグンだ。
だって声は大きいし、つば飛ばしてしゃべるし、やたらと命令口調だし。
そんな人はどこの会社によくいるとは思うけど,私の彼の採点は0点。

今朝だって、「コーヒーここに置きます」ってちゃんと言ったのに、全然聞いてない。
案の定、不注意でこぼしてシャツを汚したくせに、私のほうが怒られた。
ついでに「ここにバイトに来てどれ位になった?」と訊く。
「1ヶ月です。」
「それじゃぁ、この会社がどんな仕事しているか、だいたい分かるよねぇ?」
「はぁ…何となく。」
「じゃあ、若い感覚で、こんな本作ったら面白いんじゃないかって企画考えてよ」
「いいんですか?喜んで!」
「喜んでってキミ、居酒屋じゃないんだから。夕方までに10個、キミの若いセンスで頼むよ!」

バイト始めて1ヶ月たって、お茶汲みや電話番やコピー取りやメールの制作や、配送やらはできる様にはなったけど、いきなり企画考えろだって?
しかも夕方までに10個とは、まったくイジメだ。
いつもはコンビニで買ってきて会社で食べるお昼も、今日はスタバで一人で食べながら考えていたら、つい寝ちゃってこのザマだ。
10個か。2個じゃダメだよな、最低でも5個はないとな。
「スミマセン、5個しか思いつきませんでした。残りは明日持って来ます」
「5個?まぁいいや。そこに置いといて、後で読むから」って展開か、
「5個だと!10個って言われたら100個作るのが俺たちの頃の常識だ。まったく最近の若いもんは」って怒られるか。
たぶん後者だ。いや絶対。
一つも思いつかないまま、会社に戻る。
会社といっても、市ヶ谷の小さな出版社で、社長が日本テレビの仕事をしていた関係でここに作ったみたい。
その日テレも汐留に移っちゃったから、今はここにある意味は大してない。
最近強盗とかが多くて物騒だからコンビニはもうやめろと母親に言われ、フリーぺーパーめくってたら、この会社の募集が出ていた。
ベストセラー連発しているあの会社だと思って受けたけど、よく見たら漢字が違ってた。
受かったからいいや、出版社って聞こえもイイしと思って真面目にやってる。
人に説明する時は、「千代田区麹町の出版社に勤務してます。日本テレビの近くです」って言うけど、本当は中央線、いや厳密に言うと総武線をまたいだ反対側の新宿区にある。
実家は武蔵境だからJRで一本だけど、
「地下鉄で通ってます、家は吉祥寺の近くです。」ってつい言っちゃうのと同じだ。
昔から、お前の所03エリアじゃないんだ、っていじめられたトラウマかな。
そうそう、さっきのスタバっていうのもウソで、本当はドトールです。スミマセン。

「やぁユカリン元気?」取引先の営業マン、タケさんがデスクまで来た。
グンとの打ち合わせが終わったようだ。
「俺2月6日で26になるの、覚えやすいいでしょう。これってプレゼントの催促じゃないからね」
すると隣に座っている高田さんが、「へぇー奇遇だね。俺3月6日で36になるの。覚えやすいでしょう。これってプレゼントの催促じゃないからね」と私の代わりに反応した。
タケさんは、そうなんですか奇遇ですね、って高田さんに愛想を振りまく。
出入り業者はツラいね。
愛想話のあとで、「ユカリンの誕生日はいつなの?」とタケさんが訊いた。
「11月11日です」
この11月11日って、聞いたひとの反応はマチマチ。
今までの例で言うと「もうちょっとで“イイ夫婦の日” 。合コンでバッチリのネタになったのに惜しい!」とか、
「1番が4つもそろってて、アニメの主人公みたい」って、これは“はじめの一歩”の事かな?
「その上、11時11分11秒生まれだったら完璧なのに」とか、
「一緒にラスベガス行こうよ。ルーレットで勝ちそうな誕生日だよ」とか、ネタにはよくされる。
でも、私はこのゾロ目の誕生日になぜか誇りを持っているし、世の中に存在する様々なゾロ目を見ると、ヨッシャー!と思う。
デジタル時計の表示がゾロ目の時、ガソリンスタンドのメーターがゾロ目で止まった時、レシートの金額とかも見るし、切符の番号も当たり前のようにチェックする。
一番嬉しかったのは、成人式にお母さんからもらったお祝いの1万円札の番号がゾロ目だったこと。
しかも、SY111111って、私のイニシャル付き。
今でもずっとお財布に折ってしまってある。

とにかく私はゾロ目が好きだ。
そうだ!ゾロ目の企画を考えよう。
きっと私に幸運を運んでくれるに違いない。
例えば、こんなのはどうかなぁ。
「ウルトラ7777」
「解決ゾロ目」
「ゾロ目が世界を変える」
「ゾロ目と景気」
「ゾロ目式株式売買法」
「ゾロ目の法則」
「ゾロ目恋愛占い」
これで7つも企画が出来た!
夕方までにまとめてグンに提出するぞ。
思えば、これが不幸の始まりだった。
7つのタイトルだけを書いた企画書(?)を見たグンは、意外にも大声で「ヨシ!企画書どんどん進めてみろ」って言ったんだ。
彼の目は、まさに獲物を狙うsnake eye=蛇の目だった。
えーっ!まさにそれって、サイコロ博打で言うとピンぞろで、私の誕生日。
私に幸運を運んでくれるゾロ目が、ここにも登場した。
最近お気に入りのダルビッシュの背番号も11だし。
夢のお告げかも。
ひょっとしたら上手く行くのかも。
いやー、まさかね。


続く…

田村充義(タムラ・ミツヨシ)
東京都出身/てんびん座、O型
早稲田大学卒。
ビクター音楽産業(現:ビクターエンタテインメント)で、
数々のヒットアーティストをプロデュース。
その後、音楽プロデュースオフィス(株)田村制作所を設立。
SPECTRUM、山田邦子、小泉今日子、とんねるず、嘉門達夫、広瀬香美
藤原ヒロシ、PORNO GRAFFITTI坂本真綾などをプロデュース。
無類のサッカー観戦好き。剣道3段
「仕事は楽しく面白く」がモットー。

posted by 「HEART×BEAT」事務局 at 18:07| Comment(0) | 田村充義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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