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杉林恭雄の珠玉のショートストーリーシリーズ

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全編完結の連載小説はこちら!

「走る女」 by 田村充義
バブル絶頂期に知り合い、やがて別れてしまった恋女房。
オレは神宮外苑の周回路を走る彼女に、時を隔て再び出逢った。
Mid40世代の恋愛小説。

「ゾロ目の法則」 by 田村充義
小さな出版社でバイトをしていたわたしは、占い本の企画をしただけだったのに…。
いっぺんに訪れた歌手デビューと恋。さて気になるその行方は?

「宇宙の3犬人 〜Three Dog Knights」 by 田村充義
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「女子アナオールスター 」 by 田村充義
原宿に愛をはぐくむ縁結びの美容室があるとか…?!

「ゲンジツトウヒローのダックウォーク」 by 田村充義
エアギターに賭ける青春物語…。

「30年目のガールズトーク」 by 田村充義
45歳、独身。
30年後のクラスメイトたちの恋の行方は?
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田村充義氏の新作、
聞き録り屋と買い取り屋」完結。

平凡この上ない僕が始めたアルバイトとは…?

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2010年02月01日

ゲンジツトウヒローのダックウォーク<1>

Story by 田村充義



ウッドストックに集まった50万を超える大観衆が、オレの演奏が始まるのを今か今かと大声を上げながら待っている。
アルコールやドラッグの匂いがそこら中に充満するステージの中央でオレがギターを弾き出すと、その喧噪が一気に熱狂に変わる。
オレは恍惚とした表情を作りギブソンを歪んだ音で泣かせるが、頭の端っこはいつも冷静さ。
ステージの袖にいるマネージャーが仕事そっちのけで女を口説いている事くらいはお見通しだ。
さて、見せ場の間奏のソロ・パートがやって来た。
甘さと切なさが同居した日本人好みの官能的なフレーズを目を閉じて奏で、聴衆の感情を揺さぶるのがカルロス・サンタナのスタイルだ。
大事な間奏がピークに差し掛かった途端に、携帯のバイブがポケットで震え始めた。
Black Magic Womanを弾くカルロス・サンタナの妄想をしばし止めて、しかたなく電話に出る。
そう、オレの唯一の趣味はエアギターで、世界チャンピオンを目指して特訓中なんだ。

エアギター知ってる?はるな愛のエアあややじゃないよ。
見えないギターを演奏して盛り上げる立派な芸術さ。
「はい、水元です」急に現実に戻されたオレは、シラケタ声で応えた。
「吉岡ですけど。ゲンジくん、スカイコートの山田さんからまた夕刊が入ってないって電話があったわよ。困るなあ」
「そうですか、すみません。気を付けます」
「ほんとお願いね。半年延長してもらったばかりなんだから」
「はい…」
バイト先の新聞配達所のおカミさんである吉岡華さんからの説教電話だった。
夕刊が入ってなかったくらいで天下のサンタナに目くじら立てんなよと言いたいところだが、敢えず謝っておくしかあるまい。

オレは水元敏郎、27才のプータロー。大した目的もなく、毎日を過ごしている。
ミナモト、つまり源だからゲンジと配達所では呼ばれている。
学生時代には、敏郎をもじってトウヒローなんて呼ばれたこともあったな。
あの頃から、ゲンジツトウヒはオレの専売特許だったようだ。
新聞配達のバイトを始めて2ヶ月経った。
朝早いのが辛くて、そろそろ辞めようかなって思ってる。
どのバイトもたいてい長続きしないんだ。
何もしていないと親の手前マズイかなと思って職を探すけど、働き始めるといつも本当のオレとは違うなって思う。
さっき電話をかけてきた華さんも旦那も、とってもいいい人だ。
旦那の浩司さんは、一年中いつも同じセーターを来ている変人だけどそれもキライじゃない。バイト仲間だって嫌なヤツは一人もいない。
中でも、“ガチョーン君”と“訳ありさん”とは、けっこう話す様になった。
ガチョーン君の苗字は谷、訳ありさんは有田。もちろん、両方ともオレがつけたあだ名。
オレをゲンジと呼ぶようになった彼らへのお返しみたいなもんだ。
ガチョーン君は、奨学金を貰いながら新聞配達している感心な大学生で、スゴく真面目な子だ。
彼は、ジャージしか持ってないんじゃないかってくらい、オシャレには関心が無い。
スゴくきちっとした性格だが、配達用のチャリの扱いだけは乱暴で、スタンドを立てる時にガシャーン、ガシャーンって大きい音を立てる。
最近では、それが谷啓の持ちネタのガチョーンに聞こえる。
だから、ガチョーン君。
訳ありさんは、髪も薄くなった老人に近いオーラのおっさん。
配達が終わって朝飯をすませると、みんなとの会話を避けるようにチャリに乗って散歩に出る。
一度、訳ありさんが公園のベンチに座っている所を見掛けたことがある。
驚いたことに、子供連れの綺麗な奥さんと仲良さそうに話していた。
二人はいったいどんな関係なんだろう。
初対面には到底見えなかったから、益々彼のあだ名の訳ありさんがオレの中で板についてしまった。
50歳を超えて、住み込みの新聞配達をしていて、ベンチで美女と話す人物の人生観をいつか問いただしてみたいものだ。

さて、この配達所のいいところは、雰囲気が家族的なところ。
優しい奥さんのアイディアで、従業員の誕生日会だけは欠かさない。
夕食前にみんなでハッピーバースディを歌い、お祝いのケーキを食べるし、500円づつカンパで集めて買ったプレゼントが渡される。
こんなことが、実はスゴく嬉しかったりする。
来月は訳ありさんの誕生会だから、もうちょっとバイトを続けようかなんて思うもん。

オレは電話に邪魔されて中途になったBlack Magic Womanの間奏を続けるために、またウッドストックコンサートの妄想に入る。
見えないストラップを掛けなおし、肩幅に足を開いて仁王立ちだ。
待たせたな、50万人。
オレのギターで最高の気分にさせてやるぜ。


続く…



田村充義(タムラ・ミツヨシ)
東京都出身/てんびん座、O型
早稲田大学卒。
ビクター音楽産業(現:ビクターエンタテインメント)で、
数々のヒットアーティストをプロデュース。
その後、音楽プロデュースオフィス(株)田村制作所を設立。
SPECTRUM、山田邦子、小泉今日子、とんねるず、嘉門達夫、 広瀬香美
藤原ヒロシ、PORNO GRAFFITTI坂本真綾などをプロデュース。
無類のサッカー観戦好き。剣道3段
「仕事は楽しく面白く」がモットー。



posted by 「HEART×BEAT」事務局 at 09:25| Comment(0) | 田村充義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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